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  • 第4日12月13日平成22年第6回定例会
  • 市バスは、平成20年度から採用したIC化によって、今までとは違った、より詳細な乗車実態を把握出来る環境になったと考えます。
    そこで、今後の経営の方向を定めるための戦略立案の為にも、より詳細なマーケティングの実施が必要であると考えますが、当局の見解をお聞かせ下さい。
  • 市税が公共交通である市バスに投入されている以上、その税金がいかなる目的で市バスに投入されているのか市民に対し明確にする必要があり、その為には、市と交通事業者が一体となって拠出根拠を政策によって明確にする必要があると考えますが、当局の見解をお聞かせ下さい。
  • 公共交通機関である市バスと民間バス会社が連携して、本市の交通体系を補完し合う事は、市民に対しての交通サービス向上にも交通体系を補完し合う事は、市民に対しての交通サービス向上にも繋がり、公共交通機関である市バスと民間バス会社が本市の交通体系について協議する必要があると考えますが、当局の見解をお聞かせ下さい。
  • 現在、策定中の交通基本法に対応して、市が中心となって、電車・バス・自動車・自転車・徒歩などで構成される都市交通を市民にとって便利な交通体系とする為、協議会を設置し、総合交通政策としての交通計画を策定すべきであると考えますが、当局の見解をお聞かせ下さい。
  • 本市にとって今後、不動産価額の維持を各施策の中に検討課題として入れていく事が必要であると考えます。特に、総合的な交通政策は、その重要な部分を担い、公共交通機関としての市バスの持つ役割は、福祉・経済といった側面だけでなく、本市の不動産価額の維持にも大きく係わってくると考えますが、当局の見解をお聞かせ下さい。

以下原文

議員 岩城敏之
 ただいま議長より発言の許可をいただきましたので、発言通告書に基づき質問させていただきます。
 全国に41あった公営公共交通は、平成21年度末をもって姫路市がバス事業を譲渡、廃止したことで28となり、今後、平成23年度末までに明石、呉、平成24年度末までに鳴門がなくなることにより、25となります。全国的に公営公共交通が減少していく状況にあります。
 一方、公共交通の必要性については理解されているものの、行政と事業者の関係がどうかといえば、行政は公共交通に対しては、安全運行などが問題なく行われているのであれば、公営、民営を問わず、事業者の取り組みに任せておけばよいという傾向にあります。公共交通の赤字対策とそれへの補助、赤字による減便問題などがあるものの、行政は公共交通という企業活動に対しては、他の民間企業と同等の扱いで、事業者の活動に任せているケースがほとんどであると言われています。
 結果として、公共交通の事業者の活動に市の政策の反映が行われず、少子高齢化という社会的要因による利用者減少の時代を迎え、それに伴う収入減少、その対応策として人員削減、人件費の削減といったコスト削減で乗り切るしか選択肢がなくなり、コスト削減を続けるとサービス低下を招く危険性が高くなり、さらなる利用者の減少、そしていずれコスト削減の限界を迎えるという負のスパイラルから脱却できない状況に置かれています。
 本市の公営公共交通機関である市バスはどうかというと、平成20年度決算以降、黒字を計上し、平成22年以降も数年間は黒字を計上できる可能性が高いものの、負のスパイラルから脱却できているかというと、脱却できていない状況にあると考えます。
 これら問題を解決するため、公共交通政策の必要性について指摘されているものの、実際にはどのようにして公共交通政策を進めることが望ましいのか、負のスパイラルからどのように脱却すべきなのかといった糸口の見えないまま、負のスパイラルから脱却できない状況が続いています。
 公共交通が負のスパイラルから脱却が難しい理由として、例えば次の2点が指摘されています。まず、第1点目として、公営公共交通が企業経営であるにもかかわらず、経営の方向を定めるための戦略立案やマーケティングの実施がなされていないことから、これらの成功と失敗に関する経験値が十分に蓄積されていない点。2点目として、公共交通に関して行政が政策を行う場合の権限と予算の関係が不明確だという点であります。
 まず、第1点目について考えるならば、毎年、伊丹市公営企業会計決算審査意見書で業務実績、経営成績などが分析がされておりますが、これらデータが今後の経営の方向を定めるための戦略立案を立てるのに十分であるかといえば、十分であるとは言えません。
 特に、高齢者パスに関する高齢者の方々の利用状況については、その調査データは不明確であります。高齢者パスの費用としては、平成18年度以降、毎年5億3000万円が補てんされ、支払われておりますが、現在の利用実態と合っているのか、また、他会計から不採算公共路線補助金、生活維持路線補助金と、高齢者パスとして支払われている費用との重なりがどうなのか不明確であります。
 利用者の需要がどこにあるのか、詳細なマーケティングが必要であり、詳細なマーケティングができてこそ、今後の公営公共交通機関である市バスのあり方を考えることができると考えます。
 そこで質問させていただきます。市バスは平成20年度から採用したIC化によって、今までとは違った、より詳細な乗車実態を把握できる状況になっていると思います。今後の経営方向を定める戦略立案を立てるためにも、より詳細なマーケティングの実施が必要であると考えますが、当局の見解をお聞かせください。
 次に、2点目の公共交通に関して行政が政策を行う場合の権限と予算の関係が不明確だという点であります。
 市バスの平成21年度決算を見るならば、毎年運賃として支払われている5億3000万円の高齢者パスの費用以外に、他会計から不採算公共路線補助金として1億413万1000円が、生活維持路線補助金として3544万6000円が拠出されております。
 不採算公共路線、生活維持路線は、平成6年度の地方公営企業拠出金についての通知で示された各路線対策に要する経費に対する拠出基準から定められており、不採算公共路線は営業係数が125から200までの路線を、生活維持路線は営業係数が200以上の路線であります。これは以前、地方交付税の中に公共交通に対する補助金が加味されていた時代からのものであり、営業係数からだけ定義されているものであります。したがって、補助金名と対象路線が必ずしも一致するものとはなっておりません。
 例えば、空港直行便であるシャトル便は、営業係数が200を超えており、政策内容とは異なる生活維持路線となっております。また、高齢者パスについても、路線バスで本当に高齢者の方々の福祉的ニーズに対応できているのかというと疑問を持たざるを得ません。これは政策と補助金などが連動していないからであり、行政が政策を行う場合の権限と予算の関係が不明確だという点に該当するものであると考えます。
 そこで質問させていただきます。税が公営公共交通機関である市バスに投入されている以上、その税がいかなる目的で、またどのような配分比率で各路線に投入されているのか、市民に対して明確にする必要があると考えます。明確にするとは、行政側の政策と補助金などを連動させた上で税を投入し、どのように配分するかという理由を明確にし、市民の同意を得るということであります。そして、これは当然に事業者が単独でできることではなく、行政側である市と事業者が一体となって検討するべきであると考えますが、当局の見解をお聞かせください。
 次に、路線形成についてであります。現在、市バスの路線の多くは、中心市街地である阪急伊丹駅、JR伊丹駅を起終点にしております。公営公共交通である市バスが市内完結型の路線形成をすることは、当然のことであります。しかしながら、本市の特性の一つとして、本市は阪急神戸線、宝塚線、今津線、そしてJR福知山線という電車網に取り囲まれ、そのフレームの中に存在しているということであります。本市域のうち、中心市街地から半径3キロの外側の地域については、中心市街地に移動するよりフレームを構成する各駅に行った方が利便性が高い地域があります。既に阪急塚口、JR中山寺といったフレームを構成する各駅に市バスは乗り入れておりますが、これだけでは十分であるとは言えません。
 ただし、市バスとしての限界もあると考えます。幸いにも、本市の場合、南北の主要幹線道路である産業道路、尼崎港川西線、尼崎宝塚線には民間のバスが運行されており、おのおのの民間バスは市バスの乗り入れていないフレームを構成する各駅と連結しております。例えば、民間バスがフレームを構成する各駅と市域との路線を拡充させることができるならば、公営公共交通機関として限界のある市バスの路線弱点部分を補える可能性が高くなると考えます。
 そこで質問させていただきます。公営公共交通機関である市バスと民間バス会社とが連携して本市の交通体系を補完し合うことは、市民に対しての交通サービス向上にもつながり、公営公共交通機関である市バスと民間バス会社が本市の交通体系について協議する必要があると考えますが、当局の見解をお聞かせください。
 次に、国土交通省では、将来の人口減少、少子高齢化の進展、地球温暖化対策などの諸課題に対応するため、交通政策全般に係る課題、交通体系のあるべき姿、交通に関する基本的な法制度や支援措置のあり方などについて積極的な検討が行われており、本年6月には交通基本法の制定と関連施策の充実に向けての基本方針がまとめられました。今後、通常国会に法案と関連施策の充実案をあわせて提案されることになります。
 今回の交通基本法の制定と関連施策の充実に向けた基本的な考え方のポイントとして、3点が上げられると思います。まず1点目は、国民の一人一人が健康で文化的な最低限の生活を営むために必要な移動権を保障することを交通基本法の原点としている点であります。そして、その移動権を保障するためには、地域の実態に合うように地域公共交通を維持、再生、活性化させていくことが必要とした上で、地域公共交通の維持、活性化などに関する国の補助金制度を充実するとともに、可能な限り自治体や交通企業などによる地域の協議会の自主的な取り組みに対して、一括して交付する仕組みに改めるとしている点であります。
 なお、この交通基本法の原点とした移動権については、先週12月9日付時事通信社の官庁速報では、移動権の法案明記が困難になり、かわりに高齢化社会の進展や環境問題など将来的な課題を見据えた基本理念を明確に打ち出すことに重点が置かれそうでありますが、基本的流れに変化はないと考えます。
 そして2点目は、三位一体の低炭素化の推進のため、環境負荷の少ない交通体系として、私たちの暮らすまちを自転車、バス、路面電車、鉄道などを充実させることはもちろんのこと、居住地や事業所の立地を政策誘導することにまでさかのぼって、歩いて暮らせるまちづくりに取り組む必要があるとしている点であります。
 最後の3点目は、地域の活力を引き出す交通網の充実を社会参加の機会としてとらえ、路面電車の導入、自転車の利用ルールの徹底など、合意形成に当たっては住民参加のもとで交通ルールの徹底を含めた総合的手法の導入を目指すべきとしている点であります。総合的な交通体系の視点に立って政策を推進していくことが必要だとしている点であります。
 平成19年10月1日に施行された地域公共交通の活性化及び再生に関する法律に基づき、各地で協議会が組織されました。兵庫県下28市12町のうち、協議会が組織されていないのは8市2町、具体的に言うならば、尼崎市、西宮市、宝塚市、三田市、芦屋市、相生市、赤穂市と本市、伊丹市の8市及び稲美町、太子町の2町であります。
 地域公共交通の活性化及び再生に関する法律に基づき求められる地域公共交通総合連携計画、そしてその作成のための協議会設置については、本市の交通体系から考えて、協議会を組織する必要性が低いことについては理解し、現在、協議会が組織されていないことについて問題はないと考えます。
 しかしながら、協議会を組織せず、行政や事業者だけで公共交通について公営公共交通機関の市バスだけを対象として赤字補てんや経営問題を考えても、そこに利用者である市民の需要が反映されなければ、社会的要因の解決には結びつかず、公共交通の利用者は増加せず、公共交通が果たすべき役割を拡大していくことはできません。また、赤字補てんの補助金も政策との連動性を説明できなければ、市民に対する説明責任は果たせず、市民同意も得られません。むしろ行政が政策としてやるべきことは、公営公共交通機関である市バスが持続可能な運営を行うことが可能となるような枠組みをつくり、公営公共交通機関としての市バスの位置づけ、役割を市民に対して明確にし、市民の同意を得るための作業をすべきであります。
 そこで質問させていただきます。今後の交通基本法に対応して、事業者だけで考えるのではなく、行政が中心となって電車、バス、自動車、自転車、徒歩などで構成される都市交通を市民にとって便利な交通体系とするために、市民参加型の協議会を設置し、総合交通政策としての交通計画を策定すべき時期であると考えますが、当局の見解をお聞かせください。
 最後に、市バスの役割は、生活的側面、福祉的側面、経済的側面から考えられてきました。そこに今般の交通基本法によって環境的側面も考える必要が出てきたわけです。これらすべては移動手段という観点からとらえられているものであります。
 では、この移動手段は最終的にどのような指標として我々に実感できる数値としてあらわれてくるのか、それは不動産価額ではないかと考えます。現在まで、不動産価額は、地方行政のかかわるものではなく、市場の動向にゆだねられてきました。しかしながら、市場が決定する需要と価額は移動手段が大きく関係してきます。すなわち不動産価額は住みたいまち伊丹の指標ともなるべきものだと考えます。
 本市に限ったことではなく全国的傾向ですが、平成9年度から平成21年度を見た場合、土地評価額は下落しております。平成9年度の本市の土地評価総額は2兆548億円でありましたが、年々減少し、平成18年の1兆796億円を最低として、平成21年度は1兆1632億円であり、平成9年度の56%程度にまで減少しております。この間、固定資産税総額は市街地化農地の宅地化といった土地用途の変更、税制の変更などにより130億円前後と大きな変動は出ておりません。
 しかしながら、今後、近隣市町村と比べ、本市の不動産価格の減少率が大きくなるようなことになれば、固定資産税のみならず、あらゆる政策面において本市の財政にも影響してくる可能性が高くなります。これは本市の将来のまちづくりにも影響してくるものであり、不動産価格の維持に寄与する政策検討は総合的な交通政策に限らず必要であると考えます。
 最近、本市の中心市街地の商業地の下落率が一番大きい旨の報道がなされました。平成18年と平成21年を対比した場合、市内住宅地の路線価は上昇しているにもかかわらず、中心市街地商業地域の路線価は下落し続けており、歯どめがかかっていない状況にあります。
 また、近年、本市においては中心市街地でマンションの建築ラッシュが続いており、短期的に見るならば人口維持、または微増、若年人口の増加に寄与しますが、長期的に見るならばマンション購入者の多くが住宅ローンを使用できる年齢層が多数を占めていることから、地域の高齢者の進行率が高くなり、また将来的には市場に大量の中古マンションが供給されることにより、中心市街地における不動産価額の下落が始まる可能性が出てきたということであります。
 本市の地域特性を考えるならば、中心市街地の不動産価額が下落すれば、当然にその外円地域、例えば中心市街地を中心として半径3キロメートル円外の地域の価額は、中心市街地より下落率が大きくなる危険性があります。
 万一、地域に、市域に交通不毛地域が生ずることとなれば、さらにその危険性も高くなります。総合的な交通政策だけで解決できることではなく、関連政策を総合的に検討する必要があると考えますが、市域の交通体系が不動産価額に大きく影響してくることは確かなことであり、総合的な交通政策は不動産価額という観点からも検討すべきであると考えます。
 そこで質問させていただきます。公営公共交通機関としての市バスが持つ役割は、生活・福祉・経済・環境といった側面だけではなく、本市の不動産価額の維持にも大きくかかわってくると考えますが、当局の見解をお聞かせください。
 以上、1回目の質問を終わらせていただきます。
以上

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