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  • 第6日 3月12日平成21年第1回定例会
  • 本年1月末に出された「関西・大阪・神戸の関西3空港に関する提言」の素案では、伊丹空港の廃止は提言に盛り込まれず、3空港の一体運営も主要テーマから外されたが、将来、3空港の一体運営に関係なく、伊丹空港の民営化はあり得ると考えるが、見解をお聞かせいただきたい。
  • なにわ筋線実現に向けての動きが出てくるとともに、湾岸沿いの産業集積、交通網整備が進む中、将来、伊丹空港の利便性の優位が必ずしも維持できるかどうか疑問が持たれる。産業誘致と空港の存在意義の側面から、伊丹空港へのレールアクセスについて、見解をお聞かせいただきたい
  • 企業立地支援条例を活用した、空港と関連する産業誘致のための情報及び空港に関係する提案・意見を本市として、今後、積極的に発信することが必要と考えるが、見解をお聞かせいただきたい。

以下原文

議員 岩城敏之 
 ただいま議長より発言の許可をいただきましたので、発言通告書に基づき質問させていただきます。
 昨年7月31日、大阪府の橋下知事が関西空港の予算要望で上京した際、関西3空港のあり方について、伊丹空港の廃止も含めて9月から府庁で検討し、きちんと方向性を出さないといけないとの発言は、我々伊丹市を含む多くの関係自治体に波紋を広げました。この発言に対して藤原市長は、「伊丹空港について今後とも国が直轄で管理すべきとの考えに変わりはない」とのコメントを出され、兵庫県知事も、関空の問題点は国際空港なのに整備費を関空会社に全部負担させているところにあり、着陸回数だけふやしても解決にならないとのコメントを出されました。また、冬柴前国土交通大臣も素人の発言と反論されました。
 一方、発言後、橋下知事は9月11日、神戸市役所を訪れた際、今後、地元で3空港の一体運営の枠組みづくりが進むことに間違いはない。関空が浮上するために一致団結したいとして、関空、大阪、神戸の3空港の一体運用という考えも提案されました。そして、本年1月31日、関西、大阪、神戸の関西3空港に関する提言の素案が発表されましたが、伊丹空港の廃止について、提言には盛り込まれず、3空港の一体運営も主要テーマから外されました。
 提言の主な内容は、西日本の出入国拠点としての機能回復のため中距離国際便の誘致、国内線の回復、関空−成田便利用促進のため伊丹−成田便の廃止、鉄道、道路の整備による関空への利便性向上などの改善策を検討するというものであり、そして橋下知事は、関空が抱える巨額の有利子負債軽減など、国の責任を強調し、「関空は国に責任のある財務上の大欠陥空港、国が何も戦略を示さなかったら沈没する」とも発言されました。
 3空港の一体運用についてでありますが、伊丹空港は数少ない黒字の空港であるものの、そもそもその黒字額は関空の有利子負債の利息分すら全額補てんできるものではなく、まして全く経営主体の違う3空港が一体運用されるにはその前提として経営形態を統一する必要があり、そのためにはさまざまな問題を解決していかなければなりません。可能性は否定しませんが、簡単に進むものではないと思います。
 結果として、橋下知事も勉強不足であった、制度の壁があり府だけではできないとトーンダウンし、提言にも盛り込まれなかったわけであります。実質的議論には入らなかったわけですが、一体運営と関係なく、将来、伊丹空港が経営形態を変更する選択を迫られる可能性があるのではないかということであります。すなわち伊丹空港の完全民営化、もしくは伊丹空港の場合、経済的側面からは余り可能性がないと考えますが、上下分離方式による運用部分の民営化などの選択が迫られるのではないかということであります。
 現在の世界における空港経営の動向、また国内における空港法の施行、成田空港の完全民営化などを考えれば、伊丹空港の民営化について将来議論されることはあり得ないことではないと考えます。
 本市の場合、歴史的経緯、周辺地域の環境対策を考えるならば、民営化は今までの本市の立場、主張を全く覆すこととなり、環境対策についてもどのように行っていくのかなど、事前に解決しなければならない多くの問題点を抱えていることから、当然に本市から民営化を言うことはないでしょうし、民営化の議論に当初から積極的に加わることもないと思います。
 しかしながら、私は、本市のスタンスに関係なく、今後伊丹空港の民営化問題が上がってくる可能性があると考えますので、伊丹空港の民営化について今後、本市のスタンスは別として、本市以外の市から議論される可能性があるかどうかについて、当局の見解をお聞かせください。
 次に、大阪府の提言の素案が出された後の2月17日、2府6県の知事と4政令市の市長により、関空を国家戦略的に利用するという視点を欠いたまま首都圏中心の航空政策が進められているとの、国の航空戦略を厳しく批判する関西国際空港の機能強化に向けた緊急共同アピールが出されました。
 主な内容は、海外航空会社の国内運航を認める規制緩和策、関空へのアクセス改善を国に求めるなどであります。そして、2月20日には、金子一義国土交通大臣と橋下知事との間において、平成16年の近畿地方交通審議会答申で、中期的に整備すべき路線とされながら具体的に動きのなかったなにわ筋線について、大阪市のビジネス拠点に近い大阪駅と関空までを30分台で結ぶためのアクセス整備の一環として整備すること、また、大阪湾岸地域をアジアの物流拠点とするため、関空に低コストの物流基地を整備すること、そして、1兆1000億の有利子負債の抜本的改善を図ること、などを柱とする活性化策につき話し合いが行われました。その後、なにわ筋線実現のための動きが本格してまいりました。
 現在まで伊丹空港の優位性は立地的特性による利便性にありました。確かに大阪駅周辺からであればバスで25分の位置にありますが、道路渋滞の可能性も考えるならば、安定的に旅客を輸送する手段としては、鉄軌道の方が有利だと言えます。
 一方、JR伊丹駅からのレールアクセスを考えれば、福知山線となにわ筋線の連結は事実的に難しいと聞いております。したがって、伊丹から関空までの直行便は難しいということであります。
 さらに梅田北ヤード開発工事にあわせて東海道線を地下化し、新駅を設置する構想も具体化されております。そして、この支線をなにわ筋線と供用すれば事業費の圧縮にもつながることから、梅田におけるなにわ筋線は地下駅となる可能性があります。そうなれば、福知山線となにわ筋線の連結どころか、乗りかえすら不便になる可能性もあるということです。
 また、道路網の整備につきましても、阪神間都市計画区域の整備、開発及び保全の方針での都市交通に関する都市施設などの整備目標として、平成10年12月に、地域高規格道路の調査区画にも指定されている名神湾岸連絡線が上げられているものの、10年以内に計画を具体化するまでにとどまっています。すなわち関空と神戸が鉄道、道路、船といったあらゆる交通手段によってそれぞれが1時間以内の圏内に入っていくにもかかわらず、伊丹空港だけが他の2空港と1時間以内の圏内に入れず、今後、今までの立地的特性による利便性を失う可能性があり、伊丹空港の存在価値すら薄らいでいく可能性があることから、今後、JR伊丹駅と伊丹空港とのアクセス時間短縮が大きな課題となってまいります。
 そもそも平成16年10月8日に出された近畿地方交通審議会答申第8号、「近畿圏における望ましい交通のあり方について」には、なにわ筋線と同じく、京阪神圏において中期的に望まれる鉄道して、JR伊丹、西桑津、大阪国際空港の3.7キロの大阪国際空港広域レールアクセスも上がっておりました。この大阪国際空港レールアクセス構想に対して本市は、近畿地方交通審議会で正式に位置づけられたものの、その事業実施は中期的なものとし、大阪国際空港広域レールアクセス構想などの問題については、今後、協議の必要があるときは飛行場問題等特別委員会などで協議するとしています。その後、県においても、大阪国際空港アクセスについて、LRTの導入可能性も検討調査が行われましたが、三宮、大阪国際空港のアクセス手段としては、空港リムジンバスなどに比べ乗りかえ回数や所要時間が劣り、多くの需要が見込めず、上下分離方式により事業者が運営だけを行う場合でも採算性の確保が困難であるとの見通しが報告されています。
 鉄軌道もLRTもその事業費と需要見込みから採算性に合わないというもので、結果的に収支見込みが立たないというものであります。確かに鉄軌道やLRTが存在しなくても、伊丹空港の利便性の優位は現在も保たれているわけですし、空港利用者の多くはバスやモノレール、自動車などの交通手段を利用しており、まして現在のような財政状況の中、採算の合わない鉄軌道やLRTについて、多額の事業費の投入を検討することはばかげていることと思われるかもしれません。しかしながら、視点を変えて改めて検討する必要があると考えますので、質問させていただきます。
 市長は就任当初より、空港を生かしたまちづくりと言ってこられました。私は鉄軌道やLRTを単に空港までの交通手段として考えるのではなく、空港を生かしたまちづくりのために鉄軌道やLRTが利用できないかという観点から考える必要があるのではないかということであります。
 先ほど申し上げましたとおり、鉄軌道やLRTの計画は、その事業費の負担と採算性においてその計画がストップしております。であるならば、需要の創設と沿線地域の経済的効果を高めるための施策を考えていく必要があるのではないでしょうか。そこで、空港を単なる交通手段の利用者が通過する地点として考えるのではなく、周辺地域の活性化を中心に空港の活用を考えられないかということであります。
 例えば、いきなり大きな話になってしまいますが、航空機に関連する産業の誘致が検討できないかということであります。航空機産業は自動車産業以上にすそ野が広く、関連産業への技術的波及効果も大きく、中小企業の発展にも大きく寄与するものと期待しています。日本では、航空機製造メーカーといわれる企業は4社がありますが、2010年には自動車メーカーの1社がアメリカでビジネスジェットの生産を開始し、航空機製造に参入いたします。
 また、航空機部品製造に関する世界的評価は高く、ボーイング787ではその約35%が日本製であり、ブラジルの航空機メーカーの旅客機に関しましては、日本のメーカーが機体製造も担当しております。そして、2006年度の日本の航空機生産額は1兆1388億円となり、民間機向けの生産が防衛関連を初めて上回り、民需主導で航空機産業が成長する構図が鮮明になってまいりました。
 一方、世界では、欧州、アメリカ、カナダ、ブラジルに4大航空機製造メーカーがあり、この4社が旅客機製造の国際市場を占有しております。日本の航空機産業における旅客機の製造は、1971年、YS11の製造が中止決定され、1973年、通算181号機の完成をもって生産が終了して以来、35年以上にわたり旅客機は製造されておりません。
 こうした中、昨年、国産旅客機MRJのプロジェクトがスタートしました。残念ながらその事業拠点は名古屋になるようですが、神戸地域と伊丹空港との間には航空機製造部門を名古屋に移している企業があるものの、日本の航空機製造メーカー4社のうち3社が主要工場を置き、残る1社も業務提携している会社が航空機製造メーカーであり、実質4社すべてが神戸地域と伊丹空港との間に存在しているとも言えます。また、航空機に関連する素材メーカーも多く存在し、必ずしも中部地域だけが航空機製造に適している地域とは言えません。
 考え方によれば、伊丹空港周辺には航空機製造の土壌が整っているとも言えるのではないでしょうか。それ以外に航空機産業のシンクタンクとなるべき大学が1時間圏内に多数存在する点、航空機産業においては今後、製造以外にサポート体制を整えていく必要があり、製造する旅客機を利用する可能性が高い路線が多く存在することによって、サポート体制が効率よくできる点、航空機製造においては内陸型空港が海洋型空港よりも関連部品の輸送などで有利である点、そしてPL法の関係から、製造販売を一体化することが予想され、自動車産業の航空機産業への進出が期待される中、自動車産業と隣接する空港は日本では伊丹だけである点など、本市及び周辺自治体が航空機関連産業に関係できる可能性は十分あるのではないかということであります。
 近年、関西においては湾岸地域を中心とした産業集積が急速に進んでおります。そして、それに伴う交通網整備も進んでおります。伊丹を初めとする内陸地域は、産業的側面から見ればこのままでは空洞する危険性がないとは言えません。そこで質問させていただきます。
 本市は今までまちづくりを考える中で、本当に空港を生かし切れてきたのでしょうか。空港を活用するための努力をしてきたのでしょうか。空港の存在を維持することだけに力を傾けてきたのではないでしょうか。確かに空港の存在は本市にとって重要であります。平成18年には19億3100万円、平成19年には17億2100万円の税収が空港から上がっております。その多くは航空機燃料譲与税及び総務大臣配分、言いかえれば航空機分の償却資産であります。平成19年度は航空機燃料譲与税8億2032万8000円、償却資産4億6301万8000円であり、平成20年度でも税収総額15億2400万円が最終見込み額とされております。
 空港の存在は本市にとって非常に大切なものであります。しかしながら、今後、利便性の優位がいつまでも保たれる保証はありません。本市自身も空港の存在価値をしっかりと認識し、周辺地域の活性化のための何らかの施策を打ち出していかなければならない時期に来ているのではないでしょうか。そこで将来的に外部要因が変化していく中、鉄軌道、LRTの必要性を検討していく必要があるのではないかと考えますが、当局の見解をお聞かせください。
 最後に、本年1月1日に企業立地支援条例が施行されましたが、本条例は制定しただけでは意味がありません。本条例が存在するからこそ企業立地の情報や伊丹市独自のアイデアを発信することができ、トップセールスができる環境も整ってきたわけです。橋下知事の発言に対し、当初、各方面から単なるパフォーマンスとの声が出てまいりました。しかしながら、一方で橋下発言は多くの成果を生み出そうともしています。その中で、当事者であった伊丹市の声はどれだけ全国に届いたのでしょうか。今後、伊丹空港を活用するための声を全国に発信する必要があるのではないでしょうか。そして、その声は今までのように行政ができることだけの情報発信である必要はないと思います。伊丹市の可能性を発言すれば、その可能性の発言に対し外部から答えが得られるときがあるかもしれません。
 また、3空港の役割分担についても、伊丹側の意見や考えを積極的に提案していく必要があると考えます。私は今後、こういった情報や提案を発信していくことこそが本市にとって必要と考えますが、当局の見解をお聞かせください。
 以上をもちまして、1回目の質問を終わらせていただきます。

市長 藤原保幸
 私から、空港関係のお尋ねに対してお答え申し上げます。
 昨年の夏以降でありますけれども、航空各社、燃料価格が高騰したり、あるいは搭乗率が低迷したりいたしまして、非常に採算性が悪化してまいりました。さらには、ここのところ100年に1度とも言われます世界同時不況のあおりを受けまして、各社とも経営が相当悪化してきた。こういう中で一昨年来の路線見直しとあわせまして、約1割の路線がなくなる過去最大規模とも言われます、廃止、減便を進めとるところでございます。
 中でも関空が厳しい状況になっておりまして、搭乗率が低いということもありまして、発着路線の廃止、減便が大きくて、国内線で申し上げますと、ピーク時、平成8年10月でありますけれども、このときには34路線84便が離発着しておったわけでありますが、本年4月以降はそれが11路線45便にまで減少いたしまして、国際線でも北米路線は今月以降、サンフランシスコ、ロサンゼルスも合わせ週10便のみになってしまった。欧州路線も同じくロンドン線が廃止されたというようなこともありまして非常に厳しい状況。また、関西、関空、伊丹、神戸と3空港あるわけでありますけれども、この3空港合わせた旅客数も平成17年、このときは神戸ができておりませんで、2つの空港で2400万人余りが利用されてたわけでありますけれども、平成20年にはその2空港時代を下回って2400万人を割り込むと、こういう状況になっております。
 こうした、いわば危機的とも言える状況を踏まえまして、議員も御紹介されましたけれども、昨年7月末、大阪府の橋下知事が関西経済復興のためには関空の発展が不可欠であると。3空港のあり方をゼロベースで考えるべきだということで、伊丹空港の廃止の可能性についても言及されたということでございます。そして、年内をめどに地元としてといいますか、大阪府としての方向性、戦略をまとめる意向を示されまして、今年1月、先般、1月末でありましたけれども、この府の考え方をまとめました「関西3空港に関する提言(素案)」を策定されました。今後、パブリックコメントや議会の議論を経た後、提言として取りまとめられるというふうにお聞きしておるところでございます。
 この府の素案によりますれば、関空浮揚最大のテーマとされてまして、出入国機能の回復を中心とした空港機能とアクセスの強化に重点が置かれております。今後この素案につきましては、3空港懇談会初めさまざまな場で議論されることになろうかと思いますけれども、私といたしましては関西全体の発展を第一に考え、関空、伊丹、神戸の3空港がともに機能するため、利用者ニーズに沿った最適運用を図ることが重要ではないかと、そういう視点を強調してまいりたいし、期待しておるところでもございます。
 また、ただ関空には国が主体的に国際空港として整備を進めたわけでありますけれども、ああした海上の埋め立て空港ということで、建設に当たりまして1兆1000億もの巨額の債務が出てまいりました。これを現在の関空会社に負わせたままでスタートさせておりまして、関空の経営自体が非常に厳しいものがある。そして、このことが東アジアでは中国の上海浦東空港でありますとか、韓国の仁川の空港が国際ハブ空港を目指しとるわけでありますけれども、こうした中国、韓国の国際空港に比べますと関空の着陸料は3倍にも達しておりまして、空港使用料が非常に高コストになる原因となっておるわけであります。こうした関空の財務構造を抜本的に改善することが国際競争力の強化、そして目指しております西日本、東アジアのゲートウエーの機能を果たす上で喫緊の課題であろうと私も考えております。
 先月20日には、こうした観点から橋下知事が国に出向かれまして、国土交通大臣が関空の機能強化策を示したということでありますけれども、私としても国が早急にこの関空への支援策を具体化することが必要ではなかろうかと考えておるところでございます。
 翻りまして、私どもの伊丹空港でありますけれども、伊丹空港につきましては将来にわたって全国の空港とほぼ2時間以内で結ぶことができるという極めて利便性の高い基幹空港でありまして、地域と調和し、共生していくことが何より重要であるという、これまで申し上げてまいりました基本的な考え方に全く変わりはございません。
 そうした上で、折に触れて話題となりますこの関西3空港の一体運営についてでございますけれども、大体橋下知事もこの素案の中では、設置主体や空港の位置づけが違うから課題が多いということで具体的な提案を見送られているわけでありまして、なかなか難しいかなというふうに私も思います。ただ、議員御指摘のその問題と関係なく伊丹空港単独で民営化される可能性はどうなんだというお尋ねをいただきましたが、現在のところ私自身、具体的にそうした議論、提案をお聞きしたことはございませんし、具体的にそうした民営化のことを想定してるわけでもございません。
 ただ、議員が可能性を指摘されましたように、将来、仮にということでありますけれども、そういう民営化の議論をなされる場合には、伊丹空港につきましてはこれまでも国が環境対策、安全対策に全責任を負うということで存続協定も成り立っておりますし、実際に国が直轄で管理、運営している状況、さらには議員も御指摘の伊丹空港がたどってまいりましたこれまでの経緯等、十分に踏まえた慎重な議論を求めていく必要があるのではなかろうかというふうに考えております。
 また次に、空港とのアクセスの関係につきまして議員から御指摘ちょうだいしました。平成16年の10月に近畿地方交通審議会の答申におきまして、京阪神圏において中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線として、この伊丹空港と鉄軌道で結ぶ大阪国際空港広域レールアクセスについて盛り込まれたわけでございます。この考え方についての私の考え方を申し上げたいと思います。
 このレールアクセス構想につきましては、これまで御説明しましたような昨今の社会経済状況、あるいは関空を重視するという国の方針の中で、なかなか当面の事業化が難しいということもありまして、本市においても中長期的な検討課題としているところでございます。ただ、国がこれについて消極的であった一つの理由としましては、空港整備会計への負担において、2010年に羽田の滑走路を1本ふやす、あるいは成田空港を延長するということで、伊丹空港に回す金がないというのも大きな事情でありました。それが2010年、御案内のとおり羽田の滑走路も完成いたしますし、成田空港も滑走路の延伸ができるということもありますので、若干、状況が変わってきてるかなというふうには思っておりまして、そういう面で今後、積極的に取り組む必要があるかと思います。
 これも議員が御指摘ありましたJR大阪駅北地区の再開発、大阪圏の最後に残された大きな開発とされてるわけでありますけれども、この梅田北ヤードの再開発とあわせたなにわ筋線、あるいは名神高速道路と阪神高速の湾岸線を結ぶ名神湾岸連絡線などが検討課題に具体的に上がってまいっとるわけでありまして、各都市と伊丹空港を結ぶ、さらに伊丹空港と関空の連携を深めるための路線としてこれまで私どもで考えてまいりました広域レールアクセスについても、単独の、これも議員御指摘ありましたけれども、福知山線から空港まで延ばす、それだけの単独の事業採算性のみならず、関西全体で伊丹空港の利便性を高める、あるいは関空との連携を深める中で全体的な航空ネットワークの整備するといったような大きな観点からの経済効果的側面からの検討も含めまして、引き続きその実現に向けて取り組む必要があるのではないかと考えておるところでございまして、議員の御指摘のとおりかと思っております。
 また、昨今の厳しい経済情勢のもとではありますけれども、空港周辺地域の活性化という観点からも御指摘ちょうだいいたしました。
 本年1月に議会の方の議決をいただいて施行いたしました企業立地支援条例でありますけれども、これまで1月以降、4件ほど具体の相談、照会があったと報告を受けております。こうした条例、支援制度を最大限活用いたしまして、今後、議員が具体的に御提案いただきました航空、空港に関連する産業の立地、支援、これも非常に可能性としては夢があってすばらしいのではないかと思うわけでありますけれども、そうしたことにも取り組みまして、産業の基盤強化と持続的な空港を生かしたまちづくりということを図ってまいりたいと思っております。
 特に空港周辺の神津地区におきましては、先日、神津地区まちづくり協議会が発足いたしました。私も出席させていただきまして、いろいろ地域の方々とお話しさせていただいたわけでありますけれども、今後、地域の皆様方とともに連携しながら地域の活力の向上を目指して、空港を活用して空港周辺地域のどのような活性化ができるのか、市全体でどのように対応できるのかということについても積極的に取り組んでまいりたいと思うところでございます。
 あわせまして、従前、取り巻く環境から、ともすれば国が伊丹空港をこうしたいというのに対して、受け身の市として意見を申し上げるということが多かったわけでありますけれども、今後は議員御提案いただきましたような、伊丹空港を今後どうしていくのか、関西全体の活性化につながるような具体的な情報発信、さらには伊丹空港に関します歴史的経緯等につきましても、さまざまな発信をしていく必要があろうかと思っております。
 これまでもさまざまな場で私なりに努力してきたつもりではありますけれども、橋下知事のああした非常に大きな情報発信力に比べますと影が薄いんではないかという御注意だと思います。私もこれからさまざまな場、具体的には関西3空港の懇談会でありますとか、大阪国際空港に関する意見交換会、国との意見交換会も設けられておりますので、こうしたさまざまな機会をとらえて、マスコミも含めて、絶え間なく情報発信、また情報交換をしてまいりたいと考えておりますので、御理解賜りたいと思います。

都市創造部長 松井正道
 引き続きまして、企業立地支援条例化後の取り組み状況等についてお答え申し上げます。
 本市におきましては、「空港をいかしたまちづくり」について、特に産業振興の視点から、これまでもテクノフロンティア伊丹の誘致や近隣市と共同での「空港インフォメーション」の開設などとともに、企業活動にメリットのある空港の存在をアピールできる企業立地支援の制度化にも取り組んできたところでございます。
 昨年の12月市議会に、「伊丹市企業立地支援条例」を提案いたしました折にも御指摘いただきましたが、この制度を実効性あるものにするためには、先ほど議員御指摘いただきましたとおり、まずは多くの方面への情報発信が重要であると考えております。大阪航空局を初め、商工会議所ネットワーク、兵庫産業活性化センター、兵庫県ビジネスサポートセンター・東京、また経済新聞社など、あらゆる機関を通じて情報発信をしてまいりたいと考えております。
 加えまして、本市の場合、市が独自で用意できます工業団地のような事業用地がないため、民間企業の事業用地や企業進出の情報を継続的に収集でき、また収集した情報を適切に管理する仕組みづくりを進めることが重要であることから、平成19年度に立ち上げました伊丹商工会議所や伊丹工業会、金融機関、不動産業界等で組織します工業環境情報交換会を活用してまいります。
 それと、先ほど市長がお答えしました、制度施行後、現在まで4件の問い合わせがあるというその状況でございますが、金融機関からは1件、企業から直接が3件という状況でございます。そのうち実際、実現に向けた開発行為の事前協議が1件となっております。今後とも各界からの御意見や御教示をいただきながら、特に空港や道路交通網の利便性や質の高い雇用の安定確保などを、本市の持つ立地特性として前面に打ち出し、情報発信とPRを展開してまいりたいと考えますので、よろしくお願い申し上げます。以上でございます。

議員 岩城敏之 
 御答弁いただきました。私自身、10年来、伊丹空港の活性化につき活動してきた中で、伊丹と伊丹以外の地での伊丹空港に対する認識について大きな格差を感じております。伊丹では当たり前と思っていることが伊丹以外の地では余り理解されていない状況にあります。特に東京などでは空港問題に関し私自身「伊丹市はわがままだ」と言われたことが幾度かありました。
 また、昨年9月3日には、大阪府泉南市が、関西国際空港建設時の共存共栄理念に戻り、大阪国際空港の廃止を国及び大阪府に強く要望する旨の関西国際空港に関する緊急決議を全会一致で可決するなど、自治体レベルにおいても、存続協定に至るまでの伊丹市がたどってきた経緯が理解されているのか疑問を持たざるを得ません。私は現在までのさまざまな空港問題における本市の対応及びそのタイミングは、常に法律的、歴史的経緯から考えて正しいものであったと思います。しかしながら、伊丹市がたどってきた経緯が十分に理解されなければ、その対応は正しく理解されずタイミングもずれたものになっていく危険性があります。議論するにしても本市の立場が十分に理解されなければ意味はありません。
 昭和39年、伊丹空港に100ホンを超える爆音で、現在のジェット機騒音とは比較できないほどのすさまじいジェット機が就航し、始まった騒音反対運動は国の対策が全くない中、昭和48年2月15日、第1次調停団の調停申請が受理され、その後、第6次調停団まで市域の半分以上に拡大し、国を相手にした初の調停は全国にも例の少ないマンモス運動に発展してまいりました。そして、同年3月には、市議会でも大阪国際空港撤去都市宣言が議決され、その後、市と市議会、市民の三者の心が一つとなって30年にわたって話し合いが続くこととなりました。その間「環境基準の達成」「損害賠償」「空港の存続調査と決定」などの調停が成立し、環境基準の達成をもとに、騒音民家に設置した老朽化クーラーの取りかえ、燃料譲与税などの要求がかち取られるなどの成果が上がりました。
 その後、平成2年、航空機から出る騒音そのものの音質も変わり、環境対策も進んだことにより情勢は変化し、また関西の航空需要の増大を賄い、経済発展のためには伊丹空港の存続が不可欠であったことから、周辺環境対策には国が全力を尽くすことを前提に存続協定が成立したと理解しております。これも調停団が話し合いによって妥協点を見出すとの姿勢を貫いてきたからこそであります。
 昭和40年代、全国で公害訴訟が提起され、裁判による解決が求められる手法がとられたのに対し、伊丹は話し合いをモットーに運動を進め、ともに譲り合って解決に努める、調停による解決を選択し努力されてきたことは、伊丹の先人の方々の偉大な功績であったと私は思っております。この存続協定までの伊丹がたどってきた経緯をもっと伊丹以外の地の方々に理解してもらう作業なくして本市の立場が理解されることはないと考えますが、お考えをお聞かせください。
 次に、大阪国際空港広域レールアクセスについて、中期的な課題とし、事業採算のみならず経済的側面からの検討も含め、引き続きその実現に向けて取り組む必要がある旨の御答弁をいただきました。昨年も空港アクセス利便性向上調査研究事業が行われ、本年も同事業について予算が計上されております。しかしながら、本事業はバスによる空港までのアクセス、すなわちシャトルバスに関しての調査事業となっております。私の理解が間違っているのかもしれませんが、シャトルバスはもともと大阪国際空港広域レールアクセスについての中期的な時間を要することから、それまでの代替交通手段としてシャトルバスが出てきたものと理解しております。したがって、バスのみが空港アクセスとして単独で調査事項として取り扱われることについて疑問を感じております。あくまでも鉄軌道、LRTへの検討調査が前提となるべきと考えますが、現在、実現に向けてどのように取り組んでおられるのか、当局の見解をお聞かせいただきたいと思います。
 以上、2点を2回目の質問とさせていただき、続いて要望とさせていただきます。
 本年1月に施行されました企業立地支援条例は、本市独自の個性が含まれている部分はあるものの、本市の財政規模から考えれば条例そのものの優遇事項についてはおのずと限界があり、企業立地支援条例そのものだけでは他市と比べて必ずしも魅力があるものとは言えません。しかしながら、先ほども申し上げましたとおり、本条例の施行により、本条例に関する情報発信とトップセールスができる環境が整ったことになります。
 本市の最大の特徴は立地特性にあります。この立地的特性と本市を取り巻く周辺環境は、他市に決して劣らない魅力と可能性があります。この立地特性を活用した提案をできるシステム構築をしてこそ企業立地支援条例が生きたものになってくるのではないでしょうか。そのためには伊丹周辺の産業配置、交通網、労働力の確保、将来の需要可能性などを分析した上で、戦略的に情報を組み立てた上で発信し、それに対する外部からの情報も収集し、その方向性を決めていく必要があることから、専門部署を設置することの必要性は既に企業立地支援条例の制定を求めた一昨年の議会でも申し上げたところでございます。
 今後、伊丹市のために企業立地支援条例を本当に生きたものとするため、どのような情報発信をするのかの検討を進めていただくことを今回は要望とさせていただき、時を改めて質問させていただきます。
 橋下知事は、「関空が沈めば関西が沈む」と発言されましたが、たとえ関空への国内便の乗り入れがふえたとしてもそれは関西を通過する人がふえるだけで、関西の浮上につながるものではありません。3空港の役割分担を考える中で、まず考えなければならないのは、それぞれの空港がどのような利用者を必要とするのか、空港周辺地域が今後どのように空港を活用しているのかを考えた上で、地域連携の観点から考えていかなければならないのではないでしょうか。それぞれの地域の空港を生かした役割分担があってこそ関西の浮上があり得るものと考えます。
 もともと関空は日本から海外への出入国の窓口であるとともに、海外から多くの人々を関西に集める窓口としての役割もあったはずです。今話題のWTCはその受け皿になるべき施設であり、アジアの商業の窓口を目的としているかと思います。アジアの空港の中で関空がいかに魅力ある空港とするか、関空自体がどれだけ海外から人を受けられる地域となるか、またどのようにして関空のトランジット機能を高めるかを関西全体で検討した方が便数の増加につながるのではないでしょうか。
 橋下知事流に言えば、関空の中に日本橋を持ってくれば、飛行機の航続距離に関係なくアジアの航空利用者のニーズが必ずトランジットをふやしていくはずです。あくまでも私の私見ですが、本市も今後、関西浮上のため遠慮することなく関西に対する意見、関空に対する意見を表明されることを期待し、2回目の質問と要望を終わらせていただきます。

市長 藤原保幸
 空港に関します情報発信についての御質問にお答え申し上げます。
 伊丹空港が開港されましたのは昭和14年、1939年のことでありまして、大阪第2飛行場としてスタートいたしました。ですからことしで70年ということになります。こうした70年にわたる本市と空港とのかかわり合いについて、余り全国的に理解されてないのではないかという御指摘、全く私も同感でありまして、一層の努力をしていかないかんかと思っております。そして、この伊丹市と空港とのかかわり合いにつきましては、大きく3つの節目があるのではないかと私は思っております。1つは、議員御指摘ありました、昭和39年にジェット機が就航いたしまして、騒音問題が非常に厳しくなった。それに対して市民を初め地域住民が提起した調停申請、そしてこれらの取り組みが、本市を昭和48年の大阪国際空港撤去都市宣言することにつながったということでございます。
 第2は、その後の長い年月の間に、時には国と対峙しながら関係者の皆様方が本当に真摯に努力されまして、空港周辺の環境も改善され、航空機の騒音レベルも下がってきた。そして一方で、昭和61年に関空の整備にゴーサインが出たわけでありますけれども、当時の推計では関空ができてもまだまだそれだけでは関西圏の航空需要に応じられないということで、平成2年に関空開港後も伊丹空港を国の責任において残すという存続協定に至りました。
 そして第3には、現在がそうでありますけれども、空港政策の重要課題が、もう空港を整備することから、整備した空港をどのようにうまく運営していくかというふうにシフトすべきかを踏まえまして、空港整備法が大きく改正され、空港法となったわけでございます。そして一方では、長年にわたる取り組みによりまして伊丹空港とうまく状況を、また大きく転換期を迎えてきたということで、今後、環境、安全には従来に引き続き万全を図りながら、空港を伊丹の貴重な地域資源として活用していこうということで、平成19年、一昨年ですけれども、本市を大阪国際空港と共生する都市とすることを宣言し、現在に至っておるということでございます。
 振り返りますれば、本市の歴史はまさにこの70年、空港とともにあったなということを実感するわけでございます。そうしたそれぞれの歴史的な流れ、そして伊丹市が私、きっちり対応してきたかと思うわけでありますけれども、そういうことについて全国に情報発信いうことが重要かなというふうに、私も議員と同様に認識しておるつもりでございます。
 そうした本市と空港とのかかわり合いにつきましては、これまでも私なりにマスコミで発表させていただく、あるいは国の交通政策審議会の場でもそうした伊丹のスタンス、考え方を御説明申し上げてまいりましたけれども、今後とも関西3空港懇談会でありますとか、大阪国際空港に関する意見交換会、そのほかさまざまな機会を通じて伊丹市と空港とのかかわり合い、そして現在の伊丹市のスタンス等については多元的な情報を発信してまいりたい。そして、国に対しても関係方面に対しても働きかけてまいりたいと思っておりますので、御理解賜りたいと思います。

総合政策部長 樋口麻人
 私の方から大阪国際空港広域レールアクセスについてお答えいたします。
 平成15年12月の鉄軌道問題等対策特別委員会において、レールアクセスの事業時期については中長期的な視野での対応が必要であるため、レールアクセス実現までの当面の対応策として、県と連携を図りながら広域的な観点で市バスを活用した空港へのアクセスについて検討を行っていきたいとの表明を行い、議会の御理解をいただいた経緯がございます。市バスを活用した空港へのアクセスにつきましては、平成16年11月より新たに空港への直行便を導入し、県とも連携した広報活動を展開するなど、新たな需要喚起に努めてきたところでございます。
 先ほど議員からも御紹介のありました、平成16年10月の近畿地方交通審議会答申において、京阪神圏において中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線の中に、神津地域に中間駅を設置するルートであります。大阪国際空港広域レールアクセスが位置づけられ、国からもその必要性が認められているところでございます。関西圏全体の活性化、3空港の広域的連携の必要性等を考えますと、ますます大阪国際空港広域レールアクセスの必要性は高まっていると考えております。
 バスを活用した空港へのアクセスは、あくまでレールアクセス実現までの当面の対応策であります。JR伊丹駅から空港へのバスを活用したアクセスについて、利便性を高め、広くPRすることにより利用者の増加につなげていくことは新たな需要喚起策になり、レールアクセス実現の一方策であると考え、調査研究を行っております。今後、大阪国際空港の活性化とあわせ、実現までは多くの課題がありますものの、兵庫県等の関係機関、関係団体と広範に連携して、大阪国際空港広域レールアクセスの実現を目指してまいりたいと考えておりますので、よろしく御理解いただきますようお願い申し上げます。
以上

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