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  • 第7日 9月25日平成20年第4回定例会
  • 支援費制度から障害者自立支援法への移行下における伊丹市の福祉サービスの提供のあり方について
  • 個人個人にあった福祉サービス提供の為のコーディネートが出来る体制づくりの必要性について
  • 日額払い制や公費単価削減による、施設・事業者の施設運営環境について
  • 障害者福祉分野に於ける、個人情報の行政・地域・施設・事業者・ボランティア団体で共有できるシステムづくりについて

以下原文

議員 岩城敏之 
 ただいま議長より発言の許可をいただきましたので、私は、通告書に基づき発言させていただきます。
 平成17年10月、障害者自立支援法が成立し、平成18年4月の施行から2年が経過し、3年目に入りました。この間、障害のある人の生活や福祉サービスを行う施設、事業者の運営に大きな変化が生じてきております。また、障害者自立支援法附則は、障害者の範囲の見直しも含めて、施行後3年を目安として、障害者自立支援法を全体として見直すこととされております。そして障害児の11種類の通所・入所施設の再編と都道府県から市町村への事務移管については、5年以内に実施すべく、3年以内に結論を得るとされております。その意味でも本年度は重要な年度になると思います。にもかかわらず、介護保険と障害福祉の平成21年統合は断念との新聞報道もなされるなど、いまだ障害者福祉政策は混乱し、全体の方向性が定まらない状況にあります。
 しかしながら、全体の方向性が定まるのを待ち、厚労省の動向を待っているだけでは間に合いません。今こそ本市の地域特性、今までの本市の障害福祉施策、本市における障害者の方々のニーズを検討し、本市として、今後どのような障害福祉施策を行うのかを考えていく必要があるのではないでしょうか。そして、その考えていく上での緊急の重要課題は、まず、本市独自の自立支援策の拡充をどのように進めるのか、また、障害福祉計画の数値目標をどのように策定していくのかの2点であると考えますが、私はそのうち、本市の独自の支援策の拡充をどのように進めるかについて質問させていただきます。
 支援費制度から自立支援法に移行する中、支援費制度のもとで行われていた居宅サービス、施設サービスは、自立支援法では介護給付、訓練給付としてサービスが見直されました。そして、この見直しにより支援費制度のもとの居宅サービス、施設サービスの福祉サービスの中には自立支援法の介護給付、訓練等給付の各福祉サービスから対応するとされるサービスを選択、組み合わせることによって対応しなければならないことになりました。 しかしながら、対応するとされるサービスが施設の利用要件、利用環境により実際には使用できず、サービスが受けられない事態が生じてきております。例えば支援費制度下で、県の単独事業であった知的障害者自立生活訓練事業は、宿泊訓練ホームにおいて、知的障害者の方々を一定期間保護者から独立させ、宿泊による生活訓練を行う施設サービスでありましたが、自立支援法では、介護給付であるショートステイ、ケアホーム、訓練等給付であるグループホームを利用することによって対応することとされました。そして、宿泊訓練ホームは、自立支援法により県の補助制度が廃止されることとなり、本年3月をもって地域移行の名のもとに閉鎖されました。しかしながら、現在も24名の利用希望者がおられ、その潜在的需要は非常に高い状況にあります。そして、これら利用者の方々は、先ほど申し上げましたとおり、自立支援法のもとでは、介護給付であるショートステイ、ケアホーム、もしくは訓練等給付であるグループホームを利用しなければならないことになりましたが、ショートステイについては、既に定員がいっぱいで、入所を希望しても、なかなか入所できず、また、入所予約がとれたとしても、緊急の利用者が出た場合には利用できないのが現状であります。そして、ケアホームは短期入所が難しく、宿泊訓練ホームのような施設利用が難しいため、宿泊訓練ホームを利用していた方々のニーズに十分対応できるものではありません。さらに、グループホームは、本市においては施設として障害程度1、2の方々を対象とする軽度障害者の方々を対象とする施設が多く、重度障害の方々には利用できないのが現状であります。このように、自立支援法の福祉サービスによって対応できると考えられていても、用意されたメニューが利用者のニーズには対応できず、結果として支援費制度下で行われた福祉サービスが自立支援法のもとでは、ほとんど受けられない状況が生じてきております。
 私は、自立支援法の施行後、支援費制度下で実施されていた福祉サービスが自立支援法の福祉サービスによって十分にカバーされているかをまず調査し、地域移行という名のもとにカバーされていない部分について、本市独自の支援策を検討する必要があるのではないかと考えます。そして、このカバーされていない部分は、まさしく緊急のニーズではないでしょうか。また、支援費制度下で行われていた福祉サービスが自立支援法の福祉サービスで十分に対応できる場合であっても、介護給付、訓練等給付の福祉サービスの中から、どのサービスを選択し、組み合わせるのか、非常に複雑であり、難しく、とりわけ知的障害者の方々にとっては、福祉サービスが利用しにくい状況にあります。私は、障害福祉の分野において、介護保険法におけるケアマネージャーに相当するものがなく、障害者の方々に対して、福祉サービスをコーディネートするところがないことに問題点の1つがあると考えます。今後の障害福祉サービスは、個人個人に合った福祉サービスを提供する必要があります。そのためには行政、施設、事業者、地域、ボランティアなど一体化としてコーディネートする必要があると考えます。そのほか、施設、事業者についての日額払い制や公費単価削減は、施設運営を非常に難しくしております。私は、施設、事業者の運営環境の悪化は、将来的に福祉サービスが提供できなくなる事態を招いたり、福祉サービスの質の低下を招く危険性があり、単に施設、事業者の運営の問題としてとらえるのではなく、福祉システム全体の問題として考える必要があるのではないかと考えます。
 そして、障害者福祉に関する市の財政負担について考えるならば、支援費制度下では、居宅サービス費と施設サービス費では、その財政負担の割合は異なっておりました。居宅サービス費が国が2分の1、県が4分の1、市が4分の1を負担し、その財源は、裁量的経費である補助金であり、施設サービス費は、国が2分の1、市が2分の1を負担し、その財源は義務的経費である負担金でありました。本市の場合、自立支援法の施行される前の平成17年度の居宅サービス費は3億7629万円、施設サービス費は7億3821万円であったわけですから、居宅サービス費の4分の1の9407万円、施設サービス費の2分の1の3億6910万円の合計額である4億6317万円が、本市の財政負担額であったことになります。自立支援法においては、財政負担の割合と、その財源の位置づけが変わりました。すなわち、居宅サービス費と施設サービス費が介護給付費、訓練等給付費となり、その負担割合は、ともに、国が2分の1、県が4分の1、市が4分の1を負担することとなり、この財源の位置づけは、義務的経費である負担金となりました。一方で、本人並びに家族が1割負担することとなり、その家族の方々の負担が増加する一方、支援費制度にはなかった給付体系である、地域生活支援事業が加わり、これまでの支援費制度のもとにあった移動支援や、新たに日常生活用具の給付が地域生活支援事業に移されました。そして、地域生活支援費の負担割合は、国が2分の1、県が4分の1、市が4分の1の割合で、その財源は裁量的経費である補助金であります。福祉サービスは、年度ごとにその利用者数、利用頻度が異なり、また、自立支援法への移行に伴い、福祉サービスの内容、区分も変わっていることから、一概に各年度の対比は難しいのかもしれませんが、例えば平成17年度の市の財政負担額を自立支援法のもとで計算すると、本人並びに家族が負担する1割を差し引いた9割について、市は4分の1の割合で負担するわけですから、全体の40分の9を負担するということになります。先ほど述べました平成17年度の居宅サービス費3億7629万円と、施設サービス費7億3821万円の合計額は11億1450万円であるわけですから、その40分の9である2億5076万円が市の財政負担額となります。すなわち自立支援法のもとでは、市の財政負担額は、福祉サービスについてだけいえば、2億1241万円減っているというわけです。現段階においては、地域生活支援事業費の市の財政負担額が2億1241万円を超えることは考えにくく、自立支援法のもとでは、市の財政負担額は明らかに減っているのではないかと考えます。ちなみに、通年にわたって自立支援法のもとに福祉サービスがなされた平成19年度においては、介護給付費が2億2122万円、訓練給付費が8億6396万円、地域生活支援事業費が5628万円であり、市の財政負担額は2億5823万円となり、本人並びに家族が負担すべき1割負担額に対し、平成18年度より平成21年3月31日まで、市が独自で行っている減免制度である伊丹市月額負担上限軽減補助金26万円、伊丹市利用者負担緩和補助金1073万円を加算したとしても、2億6922万円であり、平成17年度の居宅サービス費と施設サービス費の合計額11億1451万円、平成19年度の介護給付費、訓練等給付費、地域生活支援事業費の合計額11億4147万円と、平成19年度が平成17年度に比べ、2696万円増加しているにもかかわらず、市の財政負担額は1億9395万円減っているということになります。確かに先ほど申し上げましたとおり、毎年度ごとに福祉サービスの利用者数、利用頻度も変わり、そのサービス内容も変化している上、自立支援法の施行前から、市が独自で行っていた障害者福祉事業費などが地域生活支援事業費に組み込まれるなどしているわけですから、1億9395万円が必ずしも正確な数字であるとは申し上げません。今まで法定施設などの施設サービスの実施責任が都道府県であったため、たとえ施設の数が不足しても、市町村には通所施設や入所施設など整備する責任がありませんでした。自立支援法のもとでは訓練等給付の実施責任がすべて市町村となり、通所施設や入所施設を整備する責任が生じてくるわけですから、その対応をしていかなければならず、今後、本市において整備する必要があるといわれる21カ所の通所施設や入所施設に対し、整備費が必要になるのかもしれません。また、地域生活支援事業費は、裁量的経費である補助金であり、福祉サービス費とは異なり、将来にわたっても市の財政負担額が4分の1の負担割合でおさまらない可能性があることも考えます。であるからこそ、今でなければ本市独自の対応を考えることができないのではないでしょうか。自立支援法への対応だけに追われることが、伊丹市の障害福祉施策といえるかどうかということであります。まず、支援費制度から自立支援法へ移行したことにより、何が変わり、何が必要とされているか、本当に実質的な地域移行がされているかを改めて検証し、伊丹市独自の対応をした上で、自立支援法への移行に対応していくことこそが、伊丹市独自の障害福祉施策ともいえるのではないかということであります。
 そこで、質問させていただきます。
 支援費制度から自立支援法に移行する中で、支援給付下で行われていた福祉サービス事業が自立支援法のもとでは、サービスが実質受けられなくなっている現状に対してどのように対応されるのか、当局のお考えをお聞かせください。
 次に、個人個人に合った福祉サービスを提供できるようにするためのコーディネートができる体制づくりが必要と考えますが、当局の見解をお聞かせください。そして日額払い制や公費単価削減によって施設、事業者の施設運営が非常に厳しい環境におかれておりますが、この状況に対して当局のお考えをお聞かせください。
 以上3点、自立支援法に関し、質問させていただきます。
 次に、平成17年4月1日から施行された個人情報保護法と障害者福祉サービスとの関係であります。
 近年、個人情報がマーケティング活動のために有益な情報として資産価値を持ち、本人が知らないうちに取り引きされているという現状があります。そして個人情報の悪用によって社会的な不利益を被る事例が後を立たず、大きな社会問題となっております。個人情報の慎重、かつ適法な取り扱いが求められています。一方、個人情報に過剰な反応をする傾向が強くなり、その弊害もあらわれています。障害者の方々に関する個人情報は、その内容が直接プライバシーにも関係してくることから、その取り扱いについては、より慎重に行わなければなりません。しかしながら、障害福祉サービスを行う施設、事業者、ボランティア団体等にとりましては、提供するサービスに応じた個人情報の収集が不可欠な場合も出てきております。また、今後施設、事業者、ボランティア団体などに行政、地域も含め、共同してサービスを提供することが適切な生活支援を行っていく必要があり、関係者間で情報を共有する必要性が生じてくるものと考えます。しかしながら、個人情報保護法23条は、個人情報の第三者提供を制限しており、施設、事業者、ボランティア団体などは、みずから個人情報を収集するしかなく、おのずと、その収集に限界が生じてきております。結果として、施設、事業者、ボランティア団体などの連携が薄くなるばかりか、福祉サービスのメニューによっては一定の利用者を確保できず、福祉サービスの提供を断念しなければならない事業者も生じ、福祉サービスのメニューがあっても、サービスを提供できる施設、事業者が不存在となり、利用者が利用できない状況をつくり出す危険性があり、最終的には、地域での支援ができなくなる可能性もあります。障害福祉の分野においては規制緩和の中にあって、多様な施設、事業者を争わせるのではなく、施設、事業者、ボランティア団体を育てていくという観点を持つことも必要であると考えます。また利用者にとっても、施設、事業者、ボランティア団体との接点を持つことができないことは、結果的に利用者を孤立させてしまったり、利用者の選択の余地を限定的にしてしまう危険性があるのではないでしょうか。まず、施設、事業者、ボランティア団体が個人情報保護法の対象とならなくても、それぞれの個人情報保護規定を定めた上で、個人情報の共有について、さらなるガイドラインを作成し、利用者本人の同意を得られるものについては、障害福祉分野における個人情報を行政、地域、施設、事業者、ボランティア団体が共有できるシステムづくりを検討する必要があるのではないでしょうか。あわせて障害福祉分野では、知的障害者の方々のように、本人の同意が得られない場合も多いわけですから、個人情報を最も多く有している行政が主体となって、オプトアウトによる施設、事業者、ボランティア団体などの情報を発信できるシステムづくりも検討していく必要があるのではないかと考えます。当局の見解をお聞かせください。
 以上をもちまして、私の1回目の質問を終らせていただきます。
以上

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